酒をやめて、わかった「眠りの深さ」〜高齢になってからの断酒のすすめ

06/05/2026

SLEEP & SOBRIETY

酒をやめて、わかった
「眠りの深さ」

― 高齢になってからの断酒のすすめ

酒を飲むと寝つきがよくなる・・僕は長年そう信じていました。

お酒を飲むと寝つきがよくなる・・僕は長年そう信じていました。ところが近年のスタディ(研究)は、むしろ逆だと告げていて、酒(アルコール)は眠りを浅くし、夜中の目覚めを増やし、睡眠の質を確実に下げる。酒と睡眠は、相性がいいどころか、正反対・・

酒を飲まないと寝むれない、ぢゃなくて、酒飲むから眠れない・・でした。

僕は数年前からソバーキュリアス(Sober Curious)な生活になりました。酒を飲む習慣をやめたのです。

ソバーキュリアスとは、自分の意思でお酒を控えたり、やめたりするライフスタイルのこと。「飲酒の習慣」を見直し、自分に合ったアルコールとの付き合い方を選ぶ、その一つのかたちです。

正直なところ、加齢とともに飲んだあとの回復が目に見えて遅くなっていました。若い頃なら一晩眠れば翌朝には抜けたアルコールが、還暦あたりから、翌日は必ず、ときには二日も三日も体に残る。「もう自分の体は、昔のように酒を歓迎していないのだな・・」と感じるようになりました。

昨今、本や記事、SNS・動画などで、著名な研究者やジャーナリスト、医師たちが、異口同音に「酒は体にとってはっきり危険なものだ」と語るのを見聞きしました。たとえば・・

27本の研究を統合した解析によれば、お酒は寝つきこそ早めても、その後の眠りを浅く断片的にし、記憶や感情の整理に欠かせないレム睡眠を減らす。しかもワイン2杯程度の少量でもレム睡眠は乱れ、量が増えるほど悪化する。「寝酒」はむしろ睡眠の質を下げるのだ。(参照:Sleep Medicine Reviews 2024/27研究のメタ分析)
スタンフォード大学の神経科学者アンドリュー・ヒューバーマン博士は、人気の科学ポッドキャストで、アルコールが睡眠の質を損ない、夜の後半に何度も目を覚まさせると指摘したうえで、「最も望ましい飲酒量は、週ゼロ杯だろう」と明言している。(参照:Huberman Lab Podcast #86, 2022年8月)
長寿医学で知られる医師ピーター・アティアも、世界的ベストセラー『Outlive』で「アルコールは栄養面でも健康面でも何の役にも立たない。ただ管理を要する快楽にすぎない」と述べ、「どんな少量でも体にいいわけではない」と言い切っている。とりわけ就寝前の飲酒に注意を促す。(参照:Peter Attia『Outlive』2023年)
飲酒の害は睡眠だけにとどまらない。アメリカ最大のがん研究機関である米国がん研究学会(AACR)の2024年の報告書は、飲酒をアメリカの全がんの5%超の原因とし、肥満・喫煙に次ぐ第3位のリスク要因と位置づけている。飲酒を減らす・やめることで、関連がんのリスクは8%下がるという。(参照:AACR Cancer Progress Report 2024)

てな感じで、その道の専門家がここまで言うのなら、と心が動き、ソバーキュリアスな生活習慣に切り替えてみることにしました。

ソバーキュリアスな生活で眠りが、深くなった

ソバーキュリアスな生活で眠りが深くなりました。飲んでいた頃は夜中に必ず目が覚める。それが高齢者の宿命・・当たり前だと思っていました。

でも、アルコールをやめると朝まで眠れる日が増えたのは事実です。先ほどの研究そのままの変化が、自分の体に起きたわけです。酒は寝つきを助けても、夜の後半で眠りを壊す。その「後半の壊れ」が消えただけで、朝の目覚めとスッキリ感がこれほど違うのかと驚きました。

この「眠りの深さ」は、ただ翌朝が爽やかというだけの話ではないようです。私は専門家ではないので難しいことは言えませんが、いろいろ読んでいると、深い眠りのあいだに、脳は日中にたまった疲れや老廃物を洗い流し、掃除をしている、というのです。そしてその眠りが足りないと、その掃除がうまく進まず、認知症との関わりも指摘されている・・そんなことも知りました。

歳を重ねるほど、深い睡眠は自然と減っていくのだそうで、脳の掃除が手薄になりがちな、まさにその時期に、僕は晩酌(アルコール)で脳の掃除が儘ならず、さらに眠りを削っていた・・そう気づいたとき、背筋がひやりとしました。高齢になってお酒を控えることは、単に体調の話ではなく、脳を守る話でもあるのかもしれません。

手首の相棒 Apple Watch は、嘘をつかない

こうした「深い眠り」が自分にどれだけあるのかは、いまは腕時計で手軽に知ることができます。

僕は Apple Watch を着けて寝るだけで、毎朝、前の晩の眠りが深い睡眠・浅い睡眠・レム睡眠・目覚めに色分けされて表示されます。iPhone の「ヘルス」アプリを開けば、1週間、1か月と移り変わっていく様子も一目でわかります。

効いたのは、この「見える化」でした。冠婚葬祭、訪日時に酒を飲んだ晩は、深い睡眠がはっきりと短くなる。飲まない夜は、それが目に見えて増えていきます。

眠った気でいた飲酒した夜が、じつは体をろくに休めていなかったと、数字が静かに教えてくれます。Apple Watchに表示された眠りのグラフが正直すぎて、「やっぱりな・・」と納得する、その繰り返しでした。

そして、長年この時計を着けてきて、眠りの記録以上に助けられていることがあります。

高齢者にやさしい〜Apple Watchの見守り機能

心臓の異変を教えてくれる

脈の乱れや、速すぎる・遅すぎる鼓動を感じ取ると、その場で知らせてくれます。手首で心電図を取り、そのまま医師に見せることもできます。

転倒を感知して助けを呼ぶ

家の中で転んで動けなくなっても、強い衝撃を感じ取り、しばらく返事がなければ、自分で電話できなくても自動で救急に通報し、家族に居場所まで知らせてくれます。

高血圧の兆しを拾う:

最近の機種は、何週間ぶんもの心拍の記録(手動で入力)から高血圧の傾向を見つけ、「一度お医者さんに相談を・・」とそっと促してくれます。

残念ながら、Apple Watch単体で血圧や血糖値を「測定」できるアプリは、医療的に信頼できるものは現状ありません。(参照元: American Heart Association, Hypertension 誌「Apple Watch for Hypertension Screening」 https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/HYPERTENSIONAHA.125.26031

技術の進み方を見ていると、それらも自動で測れる日は、そう遠くない気がしています。来年以降が楽しみです。こうした高齢者にやさしい見守り機能があるだけに、僕はこの相棒を手首から外せません。

飲まない夜のほうが、深い眠りにつける・・。毎朝 起床時にApple Watch の記録を眺めているうちに、そう痛感するようになりました。今では、それが僕の「眠り生活」の習慣になっていました。 Yoshio

参照元
飲酒と睡眠(少量でもレム睡眠を乱す/27研究のメタ分析)/"The effect of alcohol on subsequent sleep in healthy adults: A systematic review and meta-analysis," Sleep Medicine Reviews, 2024年 リンク
深い睡眠と脳の老廃物排出・認知症リスクの関わり/Matthew Walker らの研究, BMC Medicine, 2023年ほか
Apple Watch の睡眠ステージ計測(Deep/REM/Core/Awake)/Apple サポート リンク
「最も望ましい飲酒量は週ゼロ杯」/Andrew Huberman, Huberman Lab Podcast #86, 2022年8月
薬物の有害性ランキング(アルコールが最も有害、72点)/Nutt DJ, King LA, Phillips LD. “Drug harms in the UK: a multicriteria decision analysis." The Lancet, 2010年11月 リンク
アルコール健康障害対策(「否認の病」について)/厚生労働省 リンク
カリフォルニア州プロポジション65/OEHHA(California EPA)リンク
飲酒とがんに関する勧告/米国公衆衛生局長官(U.S. Surgeon General)2025年1月

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