老後は所得格差よりも「孤独の格差」

05/29/2020アメリカの医療, アメリカン・ライフ

晩年の母が暮らした足立区の「孤独の格差」

来月は母の招天記念日。長引くコロナ幽閉のせいなのでしょうか・・、近頃やたらと亡き両親のことが偲ばれます。

母は息子が大学卒業後、25年間暮らしたアメリカを離れ、老後は東京亀有で一人暮らしをしていました。ちなみに、JR亀有駅は、南口が葛飾区、北口は足立区です。僕は生まれは南口の葛飾区青砥で、育ちは北口の足立区でした。

母が最期を迎えたアパートは築8年の比較的新しい都営アパートで、高齢者に優しいバリアフリーなワンルームでした。ボタンを2回押すだけでお風呂が沸かせ「お風呂に入れます!」と音声で知らせてくれたり、屋上にはソーラパネルがあるので、停電はしない・・・とか、ハイテクで快適な住いで、しかも家賃は破格の1万円でした。

乳酸飲料の大手、ヤクルトさんと足立区の提供による母のようにひとり暮らしの高齢者宅に乳酸菌飲料(ヤクルト)を毎日配達することによって、安否の確認を行う「おはよう訪問事業」があり、高齢者の孤独感の緩和に役立てることを目的とした尊いお働きの恩恵を受けていました。(乳酸菌飲料(ヤクルト)の経費は社会福祉協議会様が負担されていたようです)

ヤクルトさんは月曜日から金曜日までの毎日の訪問で届けられ(土・日・祝日、年末年始、夏季休業期間の訪問はありません)。直接、高齢者に乳酸菌飲料(ヤクルト)を手渡して、安否確認を行われます。

配達員さんによる利用者への手渡しが原則ですが、不在のため手渡しできない時は郵便ポスト等あらかじめ決めた場所にヤクルトを置いておきます。そして、配達員さんが利用者宅を訪問した時、前日の乳酸菌飲料が残っていますと、アパートの自治会長さんへの安否確認の依頼が入るシステムになっていました。

この「ヤクルト・おはよう訪問事業」の事を伺い知り、これまでお世話になった訪問配達員の皆様と足立区・社会福祉協議会様への感謝の気持ちで一杯です。皆様、本当にありがとうございました。

母が亡くなってから数日後、アパートの母の部屋のドアーの前にシンプルな祭壇が設けられれていました。これはこのアパートの習わしのようで、葬儀に参列出来ないご高齢の方のために自治会が設置されているようです。

毎日たくさんのご近所の方々がドアー前の祭壇にお見えになり、お花、おいなりさん、煮物、お菓子が供えられ・・・母を懐かしみ、偲んでくださいました。

「お母さんはクリスチャンだから、お線香はダメよね?」 と、尋ねられましたが、僕は「いえ、どうぞ・・・」と、言ってご自由にして頂きました。

母は良き力に守られ、慰められ、このアパートで暮らす高齢の人々と世の悩みをともに分かちあい、楽しい素敵な日々を過ごせた事を確信しました。晩年の母が暮らした東京都足立区の高齢者が多く住むこのアパートには「孤独の格差」は存在しなかった事を知り、平安な気持ちになりました。

老後は金銭的な格差よりも「孤独の格差」が問題

健康寿命と貧困高齢者

数年前になりますが「完全に"詰んだ"「貧困高齢者」が爆増する)」(PresidentT Online)てな、老後の不安を掻き立てるような、余計なお世話な記事を拝読しました。

母国日本の厚生労働省「平成25年簡易生命表における平均寿命」によると、65才で退職した後の元気な期間は男性6年、女性9年しかない・・とのことで、(ここ南カリフォルニアの)僕の周りの高齢者に比べて、健康寿命があまりに短かすぎると感じました。

それなりの退職金や貯蓄があり、年金が支給されていてる人でも、健康寿命の保証はされないのが世の常。

ここアメリカ合衆国では寝たきりで高齢者施設に入った場合の月々の医療・生活費は8千ドル(80万円以上)かかります。 仮に50万ドル(5,579.7344万円)の資産があったとしても、5年と数ヶ月で底が尽き、上の「貧困高齢者」の仲間入りをしてしまいます。

ですから、中途半端な資産を維持するよりも、生前贈与で子どもに遺産分けをして、自ら資産2500ドル以下の"自発的"な貧困高齢者になり、国のお世話になることを選択する人が多いのが、この国の後期高齢者の現実でもあります。

コロナ禍により、老若男女の貧困者数が爆増している昨今、老後の資産運用云々よりも、とにかく踏ん張って日々生き延びる事がプライオリティでございます。

自分の時間を増やすこと、その自分の時間を人のために使うことの幸せ・・

人は自分の時間を増やすことで「時間を買う」と幸福になれる…。 自分が歳をとればとるほど、増やしたその「自分の時間」を人のために使うと、もっと幸せになれるような気がしています。

5年前からNCM2のミチ子(Michiko Hill)が主宰している、平均年齢75才の後期シニアで編成されている"Amen Choir"に参加しています。メンバーは30名余り、自分は2番目の若造です。最高齢者の先輩は94才で、この方は87才の時に再婚された強者(?)です。

毎週木曜日の夜にチャーチでリハーサル。アメリカの高齢者のハイテク度はたいしたもので、“Amen Choir”のメンバー間の連絡網はすべてEメールとSNS。春と秋のシーズンは毎週末に病院、高齢者ホーム、アルコール・ドラッグ・リハビリ施設、ホームレス・シェルターなどの慰問をしゴスペルを歌います。

男性メンバーの大半はウィルチェアーや歩行器が必要な方ばかりです。なので、慰問先の病院(諸施設)では、誰が入居者で、誰がボランティアだか、区別がつきません。でも、皆さんの顔は本当に輝いておられます。

だれが思いわずらったからとて、自分の寿命をわずかでも延ばすことができようか。

それだから、あなたがたに言っておく。何を食べようか、何を飲もうかと、自分の命のことで思いわずらい、何を着ようかと自分のからだのことで思いわずらうな。命は食物にまさり、からだは着物にまさるではないか。 空の鳥を見るがよい。まくことも、刈ることもせず、倉に取りいれることもしない。それだのに、あなたがたの天の父は彼らを養っていて下さる。あなたがたは彼らよりも、はるかにすぐれた者ではないか。 あなたがたのうち、だれが思いわずらったからとて、自分の寿命をわずかでも延ばすことができようか。 新約聖書 マタイによる福音書6:25~27

上のイエス・キリスト様のお言葉を信じて、「自分の時間」を人のために使うことを実践している"Amen Choir"の高齢者の先輩方の日々の生活は、健康長寿と密接に関係していると確信します。

最後に余談ですが、慰問先の入居経費が一ヶ月に5千ドル以上のラグジュアリーな高齢者引退者ホームは、あの独特な匂いもなく、高級ホテルのようで、何不自由のない快適なところですが、慰問に行くたびに思うことは、親族や友人などの訪問者がとても少なく寂しい感じがいたします。

対照的なのが、設備もイマイチ、匂いも気になるかな・・? って感じの高齢者引退者ホームには、いつも面会の家族や親戚で、それはとてもにぎやかで楽しそうです。天国の待合室にたどり着いた時に、人は金銭的な格差よりも、孤独の格差が問題になるような気がいたします。

PS.僕と相方ダバシュー・本田のおっさんフォークデュオ、GINTE2のオリジナルソング「閉じたページ」をYouTubeにアップしました。よろしければご視聴ください。おじぎ。

閉じたページ – GINTE2 (ex銀河鉄道)

作詞:アキコ・M・ウッド / 作曲:ヨシオ・J・マキ