移民はベッドさえあれば
古いヴォルクスワーゲン1台2往復分の荷物だけで今の家に引っ越してきたのは21年前。
それまでファーニッシュド・アパートメントだったので、自分たちの家具は一切持っていなかった。あの当時、ご自身も質素な生活をしていた教会の日系一世のYさん御夫妻が、
「移民は家族が一緒にいて、ベッドさえあればまずはおーらい(All right) よ。」
と言って、新品のフルサイズベッドをプレゼントしてくれました。 そして、記念に小さなつつじの苗をベッドルームの窓の下に植えてくれました。
手入れも何もせずに、つつじの木がそこにあることすら忘れているような毎日を過ごしていて、ある日ふと花が咲き始めた事に気が付くと、心がふっと柔らかくなります。
そしてYさんご夫妻の事を思い出します。
あと何度つつじの花が咲くの見たら、私もYさんのように、他の人の必要を親身なって助けてあげられるようになれるでしょうか。
やさしい薄桃色の花をしばらく眺めていたら、いつも私を追いかけていた時間がしばらくの間静かに止まっているかのような気がしました。
すいか